小池流の泳法紹介 |
小池流の技術はカエル足平游ぎを基本とした平体・立体の泳ぎ方から成り立っています。足の長い人や、太っている人などその体型によって、人それぞれに泳ぎ方が少しずつ違いますが、それぞれの泳ぎは基本といわれる型の上に成り立っているのです。 |
先師加藤石雄は自然態を尊ぶと教え、泳ぎは時代とともに変化し、進化を遂げると教えましました。著書「泅道技術教範」の緒言に『さてさて深妙なる泅道の技術は筆舌を以って能く伝え得るべきものに非ず、古人謂えり「法は伝えるも術は伝え得ず」と、吾人又単に其の法を伝える者か』と述べています。実際人間のからだの骨格や身長、また生活環境、文化などは江戸時代から大きく変化していることはよくご存じのことでしょう。 そんな中で、今日でも昔から伝わる多くの泳ぎの技が有効に生き続けているのです。 |
当流の技術は7門48法に分かれています。その中には基本から分かれて発生した、いわゆる他流で端技と呼ばれているようなものがあります。またそれ以上の細かい変化もあるが、この48法を修めればほゞどのような変化游泳にもついていけます。 端技は基本から派生したものであるから、基本を十分に自己のものにしなければ応用できないし、逆に端技から基本を再度学ばせてくれることもあります。従って、当流では端技と言えどもとても大切に扱っています。 |
また、この48法はあらゆる水質(水の状況)に対応するべき泳ぎ方を修めるためのものです。 当流では距離と時間に主きを置く体育としての泳ぎではなく、武道として精神面に重点を置いてきました。単に何キロ泳げるから、速く泳げるから、それらの記録を更新したからといっても、泳ぎの名手とは言えません。競泳や、遠泳は泳ぎの一科目であって、もっと広い範囲の泳ぎをとらえようとしているのです。 |
小池流の本質は、 「人それぞれの体質にあった泳ぎをそれぞれの変化ある水質に、より適合させることで、水と融和することによる精神の向上を目指すこと」 です。 |
伝書「水芸由緒」の中には以下のように述べられています。 『この門に習うものは、日々にできあがり、月々に進歩する。もし、幼い子供であっても、この道を学び得る者は溺れる心配はない。 いわんや強い壮年の者は、国家に報いる気持ちを盛んにして、武士の道に沿うべし。勉強を善くし、師の恩の有り難さを感じよ。そうすれば、人として溺れることを何も憂うことはない。 何を学んで、習い進むかということをよく見よ。習うことをやめることは自分の成長が止まることになる。 一生懸命に習って、少しでも目標に近付くようにすること。 習い初めは手足を動かし、その次は浮かび、その次は進み、その次は妙を得、その次は奥旨を得る。 またその妙を稽古する者は常に正しく誠を尽くして、師の戒めを慎むこと。 学ぶ者は自分自身の中にその妨げがあるということを思い計るべし。必ずみだりに試してはならない、危害があることを認識すること。 自然に習熟して行くので人情に厚く誠を尽くし、みだりに人を惑わす言葉を謹み、その術をよく練習し、励んで、よく考え、奥旨を熟練して怠ること無し。 心をいろいろなことに移して、本質以外の端ごとに奔走してはならない。酒を飲んで酔狂なことをするなどはもってのほかである』 これを人の道としてとらえ、水を離れても実生活で生かすことにより、小池流の本質に近づくことができるのです。 |
1)小池流の基本的な泳ぎ方
当流の泳ぎ方は次の7門48法に分かれます。それぞれの門に正体とあるのは最も重要、基本の技です。 「一法に従えば万法生ずる」 という如く、正体をよくよく修練すれば、他の末技は容易に出来るもので、いずれも正体の応用です。 泳ぎ方は固定されたものではなく、年とともに変化することは自然の節理です。 自分が相手のレベルに達しなければ、相手の力量が判りません。 「心ここに在らざれば見れども見えず」 というが如しです。 当流は「礼に始まり礼に終わる」と言うように、入水の時の決まりがあります。即ち自然の場所に対しては水神に入水の挨拶をします。その後、手足を水に浸してその指を屈折させ、次に耳に唾をつけ、そして静かに足から入水します。 不時の入水に備えるために特に準備運動はしません。むしろ陸上からいつ入水してもいいように常日頃から鍛練する事が必要です。 泅技を披露するような時は披露する相手の方に向かって、両手または片手で立游式礼を行います。即ち立游をしながら前方に肩幅で伸ばした手の掌を水面に向け、親指と他の4指を向かい合わせて水上に少しあげて構え、次に4指を前方にはねて挨拶とします。披露を終了する時も同様に立游式礼で終わります。略式には立游で軽く一礼すればよいのです。 |
小池流の泳法7門は次の通りです。 (1)平游門(ひらおよぎもん) (2)抜臂門(ぬきでもん) (3)立游門(たちおよぎもん) (4)底泳門(そこおよぎもん) (5)捨身門(すてみもん) (6)手泅門(ておよぎもん) (7)飛込門(とびこみもん) |